「紅茶のようなコーヒー」とは?浅煎りで出会う味わいと楽しみ方
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コーヒーは好きだけれど、強い苦味や重たい飲み口よりも、さらりと楽しめるものがほしい。そんなときに知っておきたいのが、「紅茶のよう」と表現されるコーヒーです。
軽やかな口当たりに、花や果実を思わせる香り。浅煎りのなかには、いつものコーヒーとは違う魅力を感じられるものがあります。ただし、軽やかだからといって、味が薄いわけではありません。その違いと、浅煎りを追求してきた北欧の作り手たちのエピソードを交えながら、楽しみ方をご紹介します。
「紅茶のようなコーヒー」は、薄いコーヒーとは違う
「紅茶のよう」と聞くと、紅茶と同じ味がするコーヒーを想像するかもしれません。しかし、この表現で伝えたいのは、香りや口当たり、余韻などを含めた、飲んだときの印象です。コーヒーの風味を説明するときには、「ティーライク」という言葉が使われることもあります。

ガツンとした重たさとは違う、さらりとした口当たり
ひと口にコーヒーといっても、口に含んだときの感覚はさまざま。どっしりとした飲み応えのあるものもあれば、さらりと軽快に飲めるものもあります。紅茶を思わせるコーヒーでは、こうした口当たりの軽やかさが魅力の一つです。
ここで区別しておきたいのが、「軽やかさ」と「薄さ」。軽やかさは、口の中で感じる重たさや質感の表現です。一方、薄さは、飲み物の濃度や味の強さに関わります。軽い口当たりでも、香りや風味がはっきり感じられるコーヒーはちゃんとあるのです。
「しっかり味がするコーヒー」と「重たいコーヒー」は、必ずしも同じではありません。苦味の強さだけでなく、香りや酸味にも目を向けると、軽やかなコーヒーを飲むときの新たな楽しみが見えてきます。
花や果実を思わせる香り、すっきりした後味
花のような華やかさや、柑橘を思わせる爽やかさ。こうした香りが、すっきりした後味や口当たりと重なり、紅茶に似た印象につながることもあります。通常の無着香コーヒーでは、花や果物を加えているのではなく、その風味を身近なものにたとえています。
ただし、「紅茶のよう」と表現されるコーヒーが、すべて同じ香りや味を持つわけではありません。花の香りを感じるものもあれば、果実のような酸味や、さらりとした飲み口が印象に残るものもあります。
花を思わせる香りの仕組みについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
『コーヒーから花のような香りがするのはなぜ?香りが生まれる仕組みを解説』
豆の風味を伝えるために。北欧で追求されてきた浅煎り
こうした軽やかなコーヒーを知るうえで、紹介したいのが北欧のスペシャルティコーヒーです。ノルウェーやデンマークなどのロースターたちは、豆ごとの風味を伝えるために浅めの焙煎を追求し、世界のコーヒー文化にも影響を与えてきました。

軽く仕上げるのは、風味を減らすためではない
北欧のスペシャルティコーヒーでは、早くから「どこで、誰が育てたコーヒーなのか」に関心が向けられてきました。デンマークのロースター「Coffee Collective」の共同創業者クラウス・トムセン氏は、同地域では以前からウォッシュドのアラビカ種をフィルターコーヒーとして飲むことが多く、雑味の少ない味わいを好む土台があったと説明しています。
そうした背景のなかで、作り手たちが取り組んだのが、豆の持つ風味をよりよく表すための浅煎りでした。生産者と直接取引し、長く関係を築くことと、焙煎によってコーヒーの特徴を伝えること。その両方を大切にしてきたと、トムセン氏は語っています。
もっとも、北欧のロースターがすべて同じ焙煎をしているわけではありません。同氏も「ノルディックロースト」という言葉でひとまとめにしようとはしていません。目指しているのは、単に焙煎を浅くすることではなく、加熱が不十分にならない範囲で、そのコーヒーのよさを表すことなのです。
オスロの店が、焙煎を見直したきっかけ
ノルウェー・オスロのロースター「Tim Wendelboe」にも、焙煎の考え方を変えた出来事がありました。創業者のティム・ウェンデルボー氏によると、2007年の開業当初は、現在よりも深く焙煎していたそうです。
転機になったのは、輸出業者が持ってきたコーヒーのサンプルでした。その味が素晴らしく、比べると自分たちのコーヒーが焦げたように感じられたといいます。この経験から、焙煎のスタイルを変える必要があると気づいたのでした。その後、浅煎りのコーヒーで北欧の焙煎競技に参加するなかで、ほかの事業者も同じ方向へ動く様子を目にしたと語っています。
この話で印象的なのは、「苦味を弱くしたい」という理由だけで焙煎を変えたのではないことです。別のコーヒーを飲んで、これまでとは違うおいしさに出会い、それを自分たちも表現しようとした。浅煎りへの転換には、そんな味覚の発見がありました。
もちろん、同店のコーヒーがすべて「紅茶のよう」というわけではありません。それでも、このエピソードからは、軽やかなコーヒーを単なる薄味と捉えられない理由が伝わってきます。味を減らすのではなく、何を感じてもらうかを考えた結果として、浅煎りを選ぶ作り手がいるのです。
浅煎りを選ぶときは、酸味にも目を向けて
紅茶のような飲み心地を試してみたいと思ったら、まず候補にしたいのが浅煎りコーヒーです。ただし、「浅煎り」という表示だけで、好みに合うかどうかが決まるわけではありません。苦味と酸味の違いも知っておくと、選ぶ際に迷いにくくなります。

苦味が控えめでも、酸味ははっきり感じることがある
一般に、深煎りでは苦味が強くなり、浅煎りでは酸味を感じやすくなります。深煎りのしっかりとした苦味や香ばしさとは違い、浅煎りでは果実を思わせる酸味や香りが印象に残るものがあります。
つまり、「軽い飲み口」と「酸味が穏やか」は別のこと。強い苦味が苦手な人に合う可能性がある一方で、酸味も控えめなものを求めている場合は、期待と違うこともあるでしょう。
浅煎りならすべてティーライクになるわけでもありません。産地や品種、精製方法、焙煎、淹れ方などによって、コーヒーの風味は変わります。
口当たりと酸味の説明を、一緒に読む
商品を探す際には、焙煎度に加えて、「ティーライク」「軽やかな口当たり」といった説明を確認してみてください。そのうえで、酸味の強さや質についてのコメントも読むと、飲んだときの印象を想像しやすくなります。
説明だけでは判断しにくい場合は、お店に相談するのもよい方法です。「強い苦味や重たい飲み口は避けたい」「酸味は穏やかなほうが好み」など、普段の言葉で希望を伝えてみましょう。
軽やかなコーヒーを、日常で楽しむ
気になるコーヒーが見つかったら、まずは店や商品がおすすめする分量と手順で淹れてみましょう。最初から粉を大幅に減らしたり、お湯を増やしたりして、軽さをつくろうとする必要はありません。口当たりと、香りや味わいの両方を確かめるところから始めてみてください。

最初のひと口は、そのままで
普段はミルクや砂糖を使う人も、無理のない範囲で、最初のひと口だけそのまま飲んでみるのはいかがでしょうか。口に含んだときに重たさを感じるか、どんな香りが広がるか。飲み込んだあとに何が残るかまで、ゆっくり味わってみます。
「紅茶に似ているかどうか」と意識しすぎなくてもかまいません。香りが華やかだったり、思ったより酸味があったり、苦味が穏やかだったり。そのコーヒーを飲んで、自分がどう感じるかを楽しんでください。
柑橘やベリーのお菓子と、香りを合わせる
お菓子を添えるなら、コーヒーに感じる風味と似たものを合わせる楽しみ方があります。柑橘を思わせるものにはレモンケーキ、ベリーのような風味があるものにはベリーのスコーンなどがおすすめです。
まずはコーヒーだけで飲み、そのあとにお菓子を食べて、もう一度飲んでみましょう。単独で飲んだときと、違う印象を持つかもしれません。必ず相性がよいと決まっているわけではないので、少しずつ組み合わせを試してみるのも楽しみです。
濃厚で苦味のあるコーヒーを飲みたい日もあれば、さらりとしたものが心地よい日もあるでしょう。「紅茶のようなコーヒー」は、単に味を薄くしたものではなく、香りや酸味、口当たりを別の形で楽しめる選択肢。いつものコーヒーとは違う飲み心地に、出会えるかもしれません。
LEOの「浅煎り」コースにも、まさに「ティーライク」と言えるコーヒー豆が登場することがあります。紅茶を意識しているわけではなくても「これは……!」と思えるあの軽やかな一杯を、皆さまにもぜひ味わってほしいです。

■ライター:もも
カフェ店長としての経験を活かし、コーヒーライターとして、10年以上活躍。現在もカフェ業界で働く夫とともにトレンドを追いながら、日々コーヒー談義を重ねている。