日本でもコーヒーが育つ?知られざる国産コーヒー豆の広がり

日本でもコーヒーが育つ?知られざる国産コーヒー豆の広がり

コーヒー豆の産地といえば、海外の国々を思い浮かべる人が多いでしょう。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、実は日本でもコーヒー豆は栽培されています。鹿児島県・徳之島では長年にわたって栽培が続き、収穫した豆を使った商品が島の外にも届くようになりました。

 

日本のどんな場所でコーヒーは育つのでしょうか。徳之島の栽培から一杯のコーヒーになるまでをたどってみます。

 

 

国産コーヒー豆とは、日本で育てた豆のこと

 

「国内で育てた豆」と「国内で焙煎した豆」の違い

 

この記事でいう「国産コーヒー豆」は、日本国内で栽培・収穫された豆のことです。海外で育った豆を日本で焙煎した場合も、焙煎は国内で行われていますが、豆そのものの産地は海外です。

 

いつも買うコーヒーでも、豆の産地と焙煎場所は別々に示されていることがありますので、商品の表示を見るときは、豆の産地と焙煎場所を混同しないようにしましょう。そういったことを前提として、「日本産」のコーヒーと言える徳之島産がどんなコーヒーなのかを見ていきましょう。

 

 

徳之島で続いてきたコーヒー栽培

 

コーヒーが育つ気候と、徳之島

 

コーヒーの木は、暑ければどこでもよく育つわけではありません。気温に加え、雨の降り方や日当たり、土の水はけなども栽培に関わります。味の素AGFの説明を参考にすると、コーヒー栽培に適した気温の目安は「年平均20℃前後」となります。

 

日本では、冬の寒さもあって、屋外でコーヒーを育てられる場所は限られます。そのなかで徳之島は、年間平均気温が21.9℃の温暖な島。日本国内でコーヒー豆を生産できる、数少ない地域の一つです。

 

とはいえ、気温が合えば栽培は簡単、というわけでもありません。徳之島では台風の強い風や海からの塩害が課題になり、谷間で育てたり、防風ネットを使ったりして木を守っています。栽培に向く条件を持つ土地で、難しさにも対処しながら育ててきたのです。

 

 

島で続いた試行錯誤

 

味の素AGFによると、徳之島でのコーヒー栽培は1982年に始まりました。最初に植えた苗は、海側では塩害、山側では冬の寒さに遭い、順調には育たなかったそうです。それでも栽培を続け、植え付けから数年を経て、ようやく花と実をつけました。

 

2017年には、徳之島コーヒー生産者会、伊仙町、丸紅、味の素AGFによる生産支援プロジェクトが始まります。防風対策に加え、収穫後に豆を加工する設備の整備なども進められてきました。木を育てることと、収穫した豆を商品にすること。その両方に取り組んできた歴史があります。

 

生産の規模を示す一例として、伊仙町は、2021年に徳之島コーヒー生産者会の4人が味の素AGFへ出荷したコーヒーを「35kg」と記録しています。これは当時の一部の生産者による出荷量で、現在の徳之島全体の年間生産量ではありません。それでも、徳之島産の豆が限られた量ではありながらも、商品として出荷されていたことがわかります。

 

 

赤い実から、見慣れたコーヒー豆へ

 

木になっているときのコーヒーは、茶色い豆の姿ではありません。花のあとにできる実は、熟すにつれて赤く色づきます。「コーヒーチェリー」と呼ばれるこの実の中にある種子が、私たちの飲むコーヒーのもとになります。

 

実を摘んだら、そのまま焙煎するわけではありません。果肉や種子を覆う部分を取り除き、乾燥させて、生豆を取り出します。この収穫後の処理が「精製」です。この流れは日本においてもほぼ同じ。徳之島でも、収穫した実の果肉を取る作業や豆の選別などが行われています。

 

精製された生豆は淡い緑色で、焙煎すると、普段見慣れた茶色いコーヒー豆になります。赤い実がなった先にも、コーヒーが飲めるようになるまでには、いくつもの工程があるのです。

 

 

徳之島産の豆が、街で出会える一杯に

PR Times 『ECHO COFFEE 第四弾、初の100%国産コーヒー「ECHO COFFEE TOKUNOSHIMA」発売のお知らせ。― 徳之島の人々が繋いできた、普遍的な日常と可能性の一杯』より

 

 

島内での販売から、都内の店頭へ

 

徳之島コーヒー生産者会は2024年、栽培してきた豆の商品化を実現しました。その年の2月に収穫した豆を使い、その年の秋にドリップタイプの商品を島内で発売しました。販売記念イベントでは試飲も行われ、栽培を続けてきた豆が、地元の人たちの手に届く一杯になりました。

 

その後、出会える場所にも変化が生まれます。2026年には徳之島産の豆を都内のロースターが仕入れ、店舗で提供・販売する商品が登場しました。島内中心の販売から、街なかでも楽しめる一杯へ。そんな動きを示す事例です。

 

 

ECHO COFFEE TOKUNOSHIMAという具体例

 

2026年9月1日に発売された「ECHO COFFEE TOKUNOSHIMA」は、100%徳之島産の豆を使ったコーヒーです。東京・南青山のLittle Darling Coffee Roastersでハンドドリップを飲んだり豆を買ったりできるほか、ECでの販売も案内されました。ただし数量限定のため、購入を考える場合は販売状況の確認が必要です。

 

発売元は、この商品の味わいを、徳之島の黒糖やきび糖を思わせる甘みと、トロピカルフルーツのような果実味で紹介しています。これはECHO COFFEE TOKUNOSHIMAという商品の説明であって、すべての日本産コーヒー豆に共通する味ではありません。産地が同じでも、豆の品種や精製、焙煎によって、楽しめる風味は変わります。

 

 

国産コーヒーを、新しい選択肢のひとつに

見かけたら、まず産地を確かめてみる

 

国産だから、海外産よりおいしい。そんなふうに優劣を決める必要はありません。いつものコーヒーを楽しみながら、ときには「これはどこで育った豆だろう」と袋の表示を見てみる。徳之島のような産地を知っていると、コーヒー売り場で目に留まるものも少し変わります。

 

国産豆を見かけたら、栽培された場所に加え、商品に書かれた味わいの紹介も確かめてみてください。気になるものに出会えたときに試すくらいが、ちょうどよい楽しみ方です。

 

 

新しい動きにも目を向けながら

 

コーヒーの産地を知る楽しさは、遠い国の豆にも、日本で育った豆にもあります。徳之島の一杯は、その選択肢が少しずつ増えていることを教えてくれます。

 

 

LEOも、コーヒーをめぐる新しい動きに目を向けながら、届ける一杯の品質やラインナップを見つめ直し続けます。

 

 

■ライター:もも

カフェ店長としての経験を活かし、コーヒーライターとして、10年以上活躍。現在もカフェ業界で働く夫とともにトレンドを追いながら、日々コーヒー談義を重ねている。


マガジン一覧に戻る