薄くない急冷式アイスコーヒーの淹れ方。スペシャルティコーヒーで夏を楽しむ
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おうちでアイスコーヒーを淹れる際、誰もが直面する「薄くなる」という悩み。「濃く淹れたはずなんだけどな……」と思っても、やはりなかなかちょうどよくならない、ということはよくあると思います。
大切なのは、「どのくらい氷が溶けるか」まで考えて、ある意味「コーヒーの濃さをもっと計画的に淹れる」、ということ。なんとなく濃くしておくだけだと、どうしても思った出来上がりにするのは難しいんですね。
今回は、スペシャルティコーヒーの鮮やかな風味を夏でも損なわず、最後の一口まで美味しく楽しむための「急冷式」のポイントを紐解いていきましょう。
「氷が溶ける」を前提に、抽出比率を考える
美味しい一杯を安定して淹れるためには、氷を「コーヒーを薄める邪魔なもの」ではなく、「抽出を完成させるための水分の一部」として捉え直す必要があります。
こういう言い方をするとすごく難しく感じるかもしれませんが、「氷も材料のひとつと考え、分量まで意識する」ということですね。
ここで重要になるのが、抽出比率(Brew Ratio)という考え方です。
氷を「薄めるもの」から「抽出の仕上げ」に変える
通常、ホットコーヒーを淹れる際の理想的な抽出比率は、コーヒー粉の重さに対してお湯の量が1:15〜1:18程度と言われています。アイスコーヒーの場合も、この「最終的な水の量(お湯+溶ける氷)」の比率を意識しておくと、薄くならない一杯に近づきます。
具体的には、サーバーに入れる「氷」と、粉に注ぐ「お湯」を合わせて、最終的な出来上がりの比率が1:15〜1:18になるように逆算します。
たとえば、粉20gに対して最終的な水の量を320g(1:16)にしたいときは、お湯を160g注ぎ、サーバーには「最終的に160g分溶ける」ことを見込んだ氷を入れておきます。飲み始める頃にお湯160gと氷160gがちょうど混ざり合い、狙った濃度のアイスコーヒーが完成します。
わざわざ計算するのは面倒なので、まずは
「粉20g、お湯160g、氷160g」
この分量を頭に入れてしまうといいかなと思います。
お湯を減らしても「未抽出」にさせない工夫
抽出に使うお湯の量を(氷の分だけ)減らすということは、短い時間で効率よくコーヒーの成分を引き出さなければならないということ。単に注ぐお湯の量を減らすだけでは、豆の芯までお湯が浸透しきらず、表面の味だけが削ぎ落とされたような「物足りない味(未抽出)」になってしまうことがあるからです。
これを防ぐためには、まずはホットと同じ挽き目・湯温を基準にしつつ、注ぎを数回に分けて、ゆっくりとお湯を落としていくのがおすすめです。抽出に使えるお湯が少ないぶん、一度にドバッと注ぐのではなく、やや時間をかけて粉全体に何度も触れさせることで、芯まで成分を引き出しやすくなります。
挽き目を細かくしたり、湯温を上げるのも抽出効率を高める方法ではありますが、その分、雑味やトゲのある苦味も出やすくなるため、「注ぎ方」の調整から試してみることをおすすめします。
「濃く淹れる」とは、単に苦味を強くすることことではありません。氷で希釈されたときに豆が持つ本来の甘みや酸味がちょうどよく開くようエッセンスを凝縮させておくことです。
LEOでは、お届けする豆が持つ繊細な個性をアイスでも再現できるよう、こうした比率の視点を常に大切にしています。
急冷式アイスコーヒーの魅力:香りをしっかり鼻の奥まで届ける
アイスコーヒーの作り方には、一晩かけてゆっくり抽出する「水出し(コールドブリュー)」などもありますが、「急冷式」であれば飲みたいときにすぐ飲めるので、まずはこちらの方法を覚えておくのがおすすめです。
※「水出し(コールドブリュー)」については、後日別記事でご案内します。
鼻の奥まで届く、鮮やかなアロマをつくる
急冷式のいちばんの利点は、抽出直後の熱いコーヒーを一気に冷やすことで、揮発しやすい香りをできるだけ逃さずにカップの中にとどめやすいことです。
コーヒーの香りは温度が高いほど空気中へ抜けてしまうため、自然に冷めるのを待つよりも、氷でさっと冷やしたほうがフルーティな香りや華やかな酸味を感じやすくなります。
コンディションの整った豆ほど、氷に負けない
氷で急冷し、さらに冷たい状態で口にするアイスコーヒーは、ホットに比べて香りの感じ方がおだやかになります。そのぶん、豆がどんな状態かによって、仕上がりの印象が大きく変わります。
焙煎から時間が経ちすぎてガスとともに香りが抜けてしまった豆では、急冷しても閉じ込めるべきアロマや甘みが残っていません。一方で、焙煎直後の豆はガスが多く、少ない湯量で抽出するアイスではお湯が粉の中まで浸透しきらず、味が乗りにくくなることもあります。
LEOでは「焙煎後1週間以内発送」を基本としつつ、焙煎から10日〜2週間ほど経ってガスの影響が落ち着いてきたタイミングを、急冷式アイスコーヒーの飲み頃のひとつと考えています。劣化しきっていないことを前提に、氷の冷たさに負けない芯の強さと、豆本来の甘みや酸味が素直に感じられる状態を目指しています。
実践、風味を損なわない急冷式の淹れ方
理論を整理したところで、次は具体的な手順を見ていきましょう。特別なテクニックは必要ありませんが、次のポイントを意識しておくと、おうちでもアイスコーヒーの完成度はぐっと高まります。
①「蒸らし」はゆっくりめに、抽出は手早く
まず、ドリッパーにセットした粉を「蒸らす」工程は、ホットと同じようにゆっくり丁寧に行ってください。ここでしっかりと粉の組織を開かせることが、その後のスムーズな抽出に繋がります。
抽出が始まったら、むしろ「いつもより少しゆっくりめ」を意識してみてください。氷が溶けること自体は、最初に決めた抽出比率の中にあらかじめ織り込まれています。大切なのは、限られたお湯の量で、粉の芯までしっかり成分を引き出しきることです。
目安としては、ホットのときと同じか、やや長めの抽出時間になっていて大丈夫です。ただし、時間が長すぎると後半に雑味が出てくるので、目標の湯量に達したら、ドリッパー内に液体が残っていても早めに外しましょう。
②最後に「混ぜる」のが、味を均一にする秘訣
抽出が終わった直後のサーバー内は、下に溶けた氷(水)が溜まり、上に濃いコーヒーが浮いているような「層」の状態になっています。このままグラスに注いでしまうと、一口目は薄く、飲み進めるほどに濃くなるといった味のムラが生じてしまいます。
そこで欠かせないのが、スプーンなどでの撹拌(ステア)です。サーバーの中にまだ氷が残っている状態で、円を描くようにしっかり混ぜてください。これによって温度が均一に下がり、濃度も整います。
氷と液体が一体化し、キンと冷え切った状態を確認してからグラスに注ぐ。このひと手間で、最初の一口から驚くほど透明感のある味わいを楽しむことができます。
「難しいことをしている」と思われがちなハンドドリップですが、秤を使って数字を確認しながら進めれば、「想像していた味と全然違う」という違和感は確実に減っていきますよ。
ミルクに負けない個性を引き出す、アイスカフェオレの愉しみ
すっきりと澄んだブラックの急冷式をマスターしたら、次はミルクと合わせた「アイスカフェオレ」にも挑戦してみましょう。ミルクのコクとスペシャルティコーヒーの風味が調和する一杯は、夏の午後を穏やかに整えてくれます。
ミルクとのバランスを支える「濃度」の作り方
カフェオレにする場合、コーヒーは「氷」と「ミルク」によって薄められることになります。そのため、ブラックで飲むときよりもさらに濃度を意識して抽出する必要があります。
おすすめは、粉の量を通常の1.2倍〜1.5倍程度に増やし、注ぐお湯の量を極端に絞る「濃縮抽出」です。ポタポタとゆっくりお湯を落とし、豆の甘みとコクを絞り出すように淹れてみてください。
そこに冷たいミルクを注ぐことで、ミルクの脂肪分に負けない、コーヒー本来の芯の強さが感じられるカフェオレになります。
「深煎り」だけじゃない。中煎りの華やかさを活かす選択肢
アイスカフェオレといえば、苦味の強い「深煎り」の豆を選ぶのが一般的です。そうすると、ビターなチョコのような風味のカフェオレになります。
もちろんそれも素晴らしいものですが、スペシャルティコーヒーならではの楽しみとして、ぜひ「中煎り」の豆も試してみてください。
たとえば、ベリーのような酸味を持つ豆でカフェオレを作ると、ミルクの甘みと重なって、まるでストロベリーシェイクのような華やかな後味が生まれることがあります。また、ナッツ系の香ばしさを持つ豆なら、キャラメルのような濃厚な甘みが引き立ちます。
おうちでも本格的なアイスコーヒーを楽しむために
冬の温かい一杯とはまた違う、温度変化と向き合う夏のアイスコーヒー。急冷式という手法は、暑さの中でコーヒーを「冷やす」ためだけのものではありません。それは、豆の中に眠る繊細なアロマを一瞬で捉え、私たちの手元まで鮮明に届けてくれるための、最も誠実な淹れ方のひとつです。
いつものグラス、いつもの氷。そこに少しだけの理論と丁寧さを加えるだけで、自宅のキッチンは最高のコーヒーショップへと変わります。LEOの豆が持つ澄んだ酸味と香りが、アイスコーヒーをさらに楽しむきっかけになれば幸いです。

■ライター:もも
カフェ店長としての経験を活かし、コーヒーライターとして、10年以上活躍。現在もカフェ業界で働く夫とともにトレンドを追いながら、日々コーヒー談義を重ねている。